バーナンキのFRB
「ワシントンで大統領に次ぐ影響力を持つ人間」と言われるのが、米連邦準備理事会(FRB)議長である。今年2月、約19年間にわたって第13代議長を務めたアラン・グリーンスパン氏が退任、ベン・バーナンキ氏が第14代議長に就任した。
グリーンスパン時代に世界が学んだ教訓は、議長個人の主義や哲学、ひいては人格が米国の金融政策を左右しかねないというものだ。
本書は米国の経済・金融政策を追うエコノミストらが、新たなトップの横顔について論じるもの。併せて、FRBの歴史や影響力、意思決定の舞台裏について詳しく解説を加える。
バーナンキ氏は過去の自説に固執する頑固なタイプではなく、柔軟な“変容”を遂げてきており、時々の状況に応じて実利的な対応を取るであろうと分析する。基本的にはグリーンスパン時代の金融政策手法を継承するとも予測するが、米国の市場関係者からは「危機管理の手腕は未知数」と見られている点も強調している。
また、現在の米国が抱える「
資産バブル」のリスクについても解説する。グリーンスパン氏は、かつてこれに似た状況下に「根拠なき熱狂」と発言して株価を急落させた“前科”がある。そうした事実を子細に積み重ねながら、今後のFRBの動向を読む。
(
日経ビジネス 2006/04/24 Copyright©2001 日経BP企画..All rights reserved.)
出版社/著者からの内容紹介
No.1日銀ウォッチャーとワシントン金融政策記者が書いた
FRBウォッチングの決定版!!
18年半ぶりの議長交代。
インフレターゲット、バブル対策、FOMCはどう変わる?
米金融政策の行方から
公開市場操作とフェデラルファンド市場の真実まで。
マーケットのプロ、個人投資家、ビジネスマンの必読書!!
内容(「BOOK」
データベースより)
18年半ぶりの議長交代。インフレターゲット、バブル対策、FOMCはどう変わる?米金融政策の行方から公開市場操作とフェデラルファンド市場の真実まで。日銀ウォッチャーとワシントン金融政策記者が書いたFRBウォッチング。
著者について
加藤 出(かとう・いずる)
東短リサーチ(株)取締役チーフエコノミスト
1965年生まれ。88年横浜国立大学経済学部卒業。同年、東京短資
株式会社入社。巨額の資金が取引される短期金融市場の一線でブローカーを務め、98年よりエコノミスト兼任。2002年より現職。同年、米国ニューヨークの大和総研アメリカ、ライトソンICAP(FRBウォッチングのシンクタンク)にて客員研究員。市場の現場の視点から金融政策予測を行っている。「加藤出ウィークリーレポート」(
日本語・英語)はブルームバーグ、日経QUICKによりグローバルに配信されており、海外中央
銀行、国際機関、ヘッジファンドなどにもファンが多い。著書に『日銀は死んだのか?』(日本経済新聞社)、『新東京マネーマーケット』(有斐閣・共著)、『メジャーリーグとだだちゃ豆で読み解く金融市場』(ダイヤモンド社)。週刊ダイヤモンド、朝日新聞、週刊金融財政事情、月刊マネージャパンなど連載多数。
山広恒夫(やまひろ・つねお)
ブルームバーグ・ニュース・ワシントン支局エディター
1950年生まれ。73年3月青山学院大学史学科(西洋史専攻)卒。同年4月時事通信社入社。同社外国経済部、ロンドン特派員。英ジェームス・ケーペル
証券シニアエコノミスト、共同通信社ロンドン、ワシントン特派員、金融証券部次長を経て、2000年11月からブルームバーグ・ニュース・ワシントン支局勤務。エディターとして、FRBなど米経済動向に関する記事の編集に携わる。ブルームバーグ・
テレビ「ワシントン・リポート」で、米国経済・金融政策について解説している。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
加藤 出
東短リサーチ(株)取締役チーフエコノミスト。1965年生まれ。88年横浜国立大学経済学部卒業。同年、東京短資(株)入社。巨額の資金が取引される短期金融市場の一線でブローカーを務め、98年よりエコノミスト兼任。2002年より現職。同年、米国ニューヨークの大和総研アメリカ、ライトソンICAP(FRBウォッチングのシンクタンク)にて客員研究員。市場の現場の視点から金融政策予測を行っている。「加藤出ウイークリーレポート」(日本語・英語)はブルームバーグ、日経QUICKによりグローバルに配信されており、海外中央銀行、国際機関、ヘッジファンドなどにもファンが多い
山広 恒夫
ブルームバーグ・ニュース・ワシントン支局エディター。1950年生まれ。73年3月青山学院大学史学科(西洋史専攻)卒。同年4月時事通信社入社。同社外国経済部、ロンドン特派員。英ジェームス・ケーペル証券シニアエコノミスト、共同通信社ロンドン、ワシントン特派員、金融証券部次長を経て、2000年11月からブルームバーグ・ニュース・ワシントン支局勤務。エディターとして、FRBなど米経済動向に関する記事の編集に携わる。ブルームバーグ・テレビ「ワシントン・リポート」で、米国経済・金融政策について解説している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
抜粋
はじめに
秘密の神殿。国鳥アメリカン・イーグルの巨大なモチーフを頂く白亜の殿堂FRB本部エクルズ・ビルを人々はそう呼んでいた。一階にはギリシャ神話の彫刻を配した荘厳な吹き抜けのホールがある。長い階段を昇り切った先には、金融政策の最高意思決定機関、FOMC(連邦公開市場委員会)の会議室が見える。会議がない時はドアは開かれており、高い窓の半開きのカーテンからこぼれ落ちる柔らかい日差しがこの「神殿」の中枢部を浮かび上がらせている。
二〇〇六年二月六日、この「神殿」で第一四代FRB議長に就任したベンジャミン・シャローム・バーナンキの宣誓式が行われた。バーナンキ新議長はまずジョージ・W・ブッシュ大統領の訪問に感謝を表明した。大統領がFRBを訪れることはきわめて珍しく、彼で三人目である。支持率低迷に喘ぐブッシュ大統領にとってみれば、世界的経済学者の名声を持つバーナンキとの親密さをアピールしたかったのだろう。
FRB議長は「ワシントンで大統領に次ぐ影響力を持つ人間」と言われる。バーナンキの最初の任期満了は四年後の二〇一〇年一月三一日に訪れるが、大統領と議会が認めれば彼は最長で二〇二〇年一月三一日まで議長を継続することができる。米国経済および世界経済に影響を及ぼす彼の今後の一挙手一投足を読むことは非常に重要である。
バーナンキ議長は二〇〇六年二月一五日の就任後初めての議会証言でも、アラン・グリーンスパン前議長の路線を踏襲すると言明している。このため、グリーンスパン時代の政策を分析することも必要だ。二〇〇五年八月、カンザスシティ連邦準備銀行は「グリーンスパンの時代」と題するシンポジウムを開いた。そこでアラン・ブラインダー・プリンストン大学教授(元FRB副議長)は、彼が数々の危機に適切な対応をとってきた点を賞賛しつつ、「ラッキーなFRB議長だ」と評した。時代の運に恵まれていたのだという。バーナンキにも幸運の女神は微笑むのだろうか?
本書は金融市場のプロフェッショナル、研究者、個人投資家、そして広くビジネスマンの期待に応えるべく、米国金融政策の本質に迫る「FRB(Fed)ウォッチング」の決定版を目指した。校正段階ぎりぎりまで最新情報を盛り込み、さらに、マスメディアでは伝わらない舞台裏の空気、現地調査を元にした金融市場の実態なども解説している。
第1章ではバーナンキの生い立ち、論文、講演、議会証言を分析して、インフレ・ターゲットなど彼が志向する今後の金融政策を占ってみた。現時点でこれほど詳細なバーナンキ分析は米国においても存在しないだろう。第2章は、資産バブルと格闘するFRBを解説した。第3章ではFRBウォッチングの基礎となる組織構成をその歴史をさかのぼって詳述。理事、地区連銀総裁の横顔などを取り上げた。第4章は、FRBが政策誘導対象としているフェデラルファンド市場の現場を生々しく描写した。その様子は、量的緩和策から平時の短期金融市場に戻りつつある日本の金融機関にとっても参考になるだろう。第5章では、FRBの透明性を高めたグリーンスパン議長の足跡を辿る。「秘密の神殿の扉」を彼がどのように開けてきたのかが理解できるだろう。第6章は、FRBと政治の関係を検証した。現在の独立性に到達するまでには、譴澆匹の闘争が存在していた。今日の日本にとっても多くの示唆を含んでいると思われる。
本書は市場の現場の視点から国内外の中央銀行の動向を分析・予測しているエコノミストと、ワシントン現地で長年取材を積み重ねてきた通信社記者とのコラボレーションである。
加藤出は短期金融市場の現場で十数年間ブローカーを経験し、現在は市場のプロ向けに情報発信を行っている。二〇〇二年にはニューヨークでFRBウォッチングのすを行い、著名なFRBウォッチャーであるライトソンLLC(現ライトソンICAP)チーフエコノミストのルー・クランドル氏(ニューヨーク連銀出身)と大和証券アメリカ・チーフエコノミストのマイケル・モラン氏(FRB出身)に丁寧にその手法を教わった。本書の作成においてもクランドル氏およびライトソンICAPから多大な資料提供、アドバイスをいただいている。
山広恒夫は、グリーンスパン議長が「神殿」の扉をまさに開け始めた一九九四年にワシントンに赴任となり、それ以降、同議長の金融政策を追ってきた。ルービン財務長官が就任した九五年には、日本人として初めて財務省記者室に常駐する栄誉を与えられ、ここを拠点に財務省とFRBを間近で取材する機会を得ている。また、グリーンスパン議長が「説明責任」を果たす上で、最も重視する議会証言を現場取材し、議長がふと漏らす重要事項を克明に記録してきた。特に議会公聴会の質疑応答には、金融政策の真実を掘り起こす上で貴重なファクトが多々含まれている。(後略)